ローマ史

ローマは1日にして滅びず(14)

紀元800年 カールの戴冠(2) カールの戴冠より1年前のことです。 新しいローマ教皇*1レオ3世はローマの政争に巻き込まれた。・・・・事の発端は、レオが教皇に就任したことを喜ばないローマの貴族グループがレオの不品行を非難し、レオの廃位を画策し…

ローマは1日にして滅びず(13)

紀元800年 カールの戴冠 西ローマ帝国の復活 ・・・・・「REX PATER EUROPAE ヨーロッパの父にして王」カールは、長期の領土巡幸に出発したが、この行幸は結局ローマ再訪と長年の宿願の達成をもたらすことになる。五人目の妻で最後の妃であった美しいリウ…

ローマは1日にして滅びず(12)

紀元476年、西ローマ帝国が滅びてから、都市ローマはどんなことを経験したのでしょうか? ローマは1日にして滅びず(3)で述べたようにローマは一旦、オドアケルの支配下に入り、次にはテオドリック1世の東ゴート王国の支配下に入ります。テオドリック…

ゲルマーニア  タキトゥス

台風の雨をやり過ごすために、以前、買っておいて読み切れていなかった岩波文庫の「タキトゥス ゲルマーニア」 ゲルマーニア (岩波文庫 青 408-1)作者: コルネーリウス・タキトゥス,泉井久之助出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1979/04/16メディア: 文庫 ク…

ローマは1日にして滅びず(11)

紀元1453年 ゴート族のドナウ渡河から1075年 コンスタンティノープルの陥落 ・・・・その穏やかな人柄で知られた皇帝は静かに語りかけた。 「いよいよ時は来た。・・・・・・この戦いが始まって以来今日まで、君たちは我らの信仰の敵に対して勇敢に…

ローマは1日にして滅びず(10)

紀元1400年 ゴート族のドナウ渡河から1022年 マヌエル2世 コンスタンティノープルを首都として新たに建国されたラテン帝国は内紛が続き、長続きしませんでした。それは当時の西ヨーロッパとはまったく異なる社会を統治する技術がなかったからでしょ…

ローマは1日にして滅びず(9)

紀元1204年 ゴート族のドナウ渡河から826年 コンスタンティノープル陥落 1204年、コンスタンティノープルは第4回十字軍将兵によって占領されます。彼らは自分たちのなかからフランドル*1伯ボードゥアン9世を皇帝に選出してラテン帝国をここに建…

ローマは1日にして滅びず(8)

紀元1180年 ゴート族のドナウ渡河から802年 マヌエル1世による征服 1180年のローマ帝国 またローマ帝国は盛り返しました。1025年のバシレイオス1世の頃には及びませんが、1095年の時より領土を増やしています。盛り返した立役者はマヌエル…

ローマは1日にして滅びず(7)

紀元1071年 ゴート族のドナウ渡河から693年 マンツィケルトの大敗北 紀元378年のゴート族ドナウ渡河からずっとローマ帝国の滅亡をここまで引っ張ってきたので、これを読まれている方はもうすでに、ローマはそう簡単に滅びない、と予想されているこ…

ローマは1日にして滅びず(6)

紀元1025年 ゴート族のドナウ渡河から647年 バシレイオス2世による復興 一瞬にしてシリア、エジプトの両属州を失った帝国は、以後、攻め寄せるアラブ軍との熾烈な国土防衛戦争に忙殺され、そのなかから、小アジアとバルカン半島を国土の中核とする集…

ローマは1日にして滅びず(5)

紀元678年 ゴート族のドナウ渡河から300年 イスラムのコンスタンティノープル包囲 5年前から毎年、帝都コンスタンティノープルがアラブ海軍に包囲される事態になりました。ここにいたるまで何があったのでしょうか? 日の出の勢いのアラブ人たちは元…

ローマは1日にして滅びず(4)

紀元565年 ゴート族のドナウ渡河から187年 ユスティニアヌス帝による再征服 ローマ帝国は476年の西ローマ帝国滅亡にも関わらず、また国力を増大させました。ユスティニアヌス帝の時には東ゴート王国を滅ぼしてイタリア半島を奪回、アフリカでもヴァ…

ローマは1日にして滅びず(3)

紀元476年 ゴート族のドナウ渡河から98年 西ローマ帝国の滅亡 475年、当時東方で認められた数少い西方の皇帝の一人ユリウス・ネポスは、1年余の短い支配ののち、軍司令官(マギステル・ミリトゥム)でパトリキウスの爵位をもった実力者オレステース…

ローマは1日にして滅びず(2)

紀元410年 西ゴート族によるローマ劫掠 紀元378年の西ゴート族ドナウ渡河から32年、紀元410年8月24日、西ゴート族はアラリックに率いられて都市ローマを包囲しています。(1)で皇帝テオドシウスの側近に取り立てられたあのアラリックです。…

ローマは1日にして滅びず(1)

「ローマは1日にして成らず」という言葉はときおり聞かれる言葉ですが、ひねくれ者の私は「ローマは1日にして滅びず」という言葉を打ち出したい、と思いました。そして、このシリーズではローマが滅びそうになりながら滅びずに存続していく様を叙述したい…

ダフニスとクロエー

ダフニスとクロエー (岩波文庫 赤 112-1)作者: ロンゴス,松平千秋出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1987/03/16メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 20回この商品を含むブログ (19件) を見る ここのところずっと読んでいなかったのですが、今回、読み始めたら…

ポンペイ展

今の会社では今週が夏休みです。名古屋にポンペイ展がきていたので見に行ってきました。ここ十数年、こういう文明展のようなものに行くのがおっくうになっていたのですが、そしてローマ文明だと特に見ることを躊躇していたのですが、平日に見に行く機会はそ…

ヒュパティア

ヒュパティアのことを書きたいと以前書いたが、その時は、ヒュパティアとともにアレクサンドリア大図書館が滅んだのだと思い込んでいた。ところが調べてみるとそうではなく、大図書館ははるか400年以上前、カエサルがアレクサンドリアに滞在している時に…

古代アレクサンドリア図書館についてのメモ

アレクサンドリア図書館にまつわる話の最後を飾る悲劇的人物ヒュパティアのことをそのうちに書きたいので、その前に大図書館とセラペイオンの関係を明確にしておきたい。そのためのメモ。 知識の灯台―古代アレクサンドリア図書館の物語作者: デレクフラワー,…

樺山紘一「地中海――人と町の肖像」とデレク・フラワー「知識の灯台――古代アレクサンドリア図書館の物語」

樺山紘一の「地中海――人と町の肖像」 地中海―人と町の肖像 (岩波新書)作者: 樺山紘一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/05/19メディア: 新書 クリック: 13回この商品を含むブログ (25件) を見る という本を読んでいるが、なかなかおもしろい。特に第2…

ローマ神話の発生 ロムルスとレムスの物語

このところ、工場統計力学に関係のある話を書けなくなっている私です。で、今日はこの本の紹介です。 ローマ神話の発生―ロムルスとレムスの物語 (現代教養文庫)作者: 松田治出版社/メーカー: 社会思想社発売日: 1992/08メディア: 文庫 クリック: 1回この商品…

プルターク英雄伝(十二)

プルターク英雄伝〈第12〉アラートス,アルタクセルクセース,ガルバ,オトー (1956年) (岩波文庫)作者: プルターク,河野与一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1956/09/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る 私は岩波文庫のプルターク英雄伝を(…

プルターク英雄伝(一)

プルターク英雄伝 1 テーセウス,ロームルス,リュクールゴス,ヌマ (岩波文庫 赤 116-1)作者: プルターク,河野与一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1952/04/05メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る プルタークはプルタルコスのこ…

プルターク英雄伝(2)

プルターク英雄伝に取り上げられている人々の年代を調べ、没年でソートしてみました。 こういうことでは日本語のWikipediaより英語のWikipediaのほうが断然、情報量が多いですね。対比列伝 Parallel Lives----Wikipediaからのリンクをたどって年代を調べまし…

プルターク英雄伝

プルターク(あるいはプルタルコス)の英雄伝(あるいは対比列伝)は、古代ローマのギリシア人哲学爺プルタルコスが自分から見て古人であるギリシアとローマの政治的あるいは軍事的な著名人を対比させて描いた伝記です。今私が「政治的あるいは軍事的な著名…

ローマ人の物語 ハンニバル戦記[下]

ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) (新潮文庫)作者: 塩野七生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/07/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 16回この商品を含むブログ (90件) を見る この本の扱っている時代:BC205〜BC146 この本でのクラ…

ローマ人の物語 ハンニバル戦記[中]

ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中) (新潮文庫)作者: 塩野七生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/07/01メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 16回この商品を含むブログ (93件) を見る ローマ勢力の撃破を狙うカルタゴのハンニバル・バルカは、BC2…

ローマ人の物語 ハンニバル戦記[上]

ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) (新潮文庫)作者: 塩野七生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/07/01メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 34回この商品を含むブログ (152件) を見る 塩野七生の「ローマ人の物語」第2巻は、「ハンニバル戦記」とい…

地上の夢 キリスト教帝国(カール大帝の<ヨーロッパ>)

地上の夢キリスト教帝国―カール大帝のヨーロッパ (講談社選書メチエ)作者: 五十嵐修出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/10メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を見るローマ帝国は真に偉大でした。そのため、それが滅んだ…

マルクス・アウレリウスとハドリアヌス

「ふたたびハドリアヌス」で書き落としたことだが、塩野七生の「ローマ人の物語 XI 終わりの始まり」を読んでいて、マルクス・アウレリウスがハドリアヌスの功績を認めざるを得なかったと思ったに違いないもう一つの場面に出会った。アントニヌスがシリア総…